NASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が8月21日にフライト準備審査を完了し、8月30日の…

NASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(Roman Space Telescope)が8月21日にフライト準備審査(Flight Readiness Review)を完了し、打ち上げが目前に迫っている。2026年8月30日午前7時26分(EDT)、ケネディ宇宙センターLC-39AからSpaceX Falcon Heavyロケットで太陽・地球L2点のハロ軌道へと旅立つ。ハッブルの100倍以上の視野を持つ2.4m主鏡の赤外線望遠鏡が、宇宙の構造とダークエネルギーの謎に迫る。

FRR完了が意味するミッションの節目

8月21日、NASA、ローマン宇宙望遠鏡プロジェクト、SpaceXの各チームがケネディ宇宙センターでフライト準備審査を実施した。FRRは有人・無人を問わず、NASAミッションにおいて打ち上げ前の最終的なゴーサインを出す重要なマイルストーンである。ミッションマネージャーが現状を確認し、最終的な打ち上げ準備活動への移行を認証した。

このFRRの前日、8月20日には打ち上げドレスリハーサルも完了している。宇宙機の電源投入シミュレーション、Falcon Heavyの燃料充填手順の模擬実行、天候ブリーフィング、トラブルシューティングの演習をNASAとSpaceXの施設にまたいで行った。コンソール上での通信からミッションシステムまで、発射日当日の一連のオペレーションをエンドツーエンドで検証した。

FRR完了を受けて、今後はフェアリングに封入されたローマン望遠鏡をパッド39AのSpaceXハンガーへ輸送し、ロケットへの取り付け作業が行われる。

ハッブルの100倍の視野を実現する2.4m赤外線望遠鏡

ローマン宇宙望遠鏡の主鏡は直径2.4メートル。このサイズはハッブル宇宙望遠鏡と同じだが、焦点距離が短く設計されているため視野角はハッブルの100倍以上に達する。可視光から近赤外線(0.48〜2.30μm)を観測波長域とし、広視野機器(WFI)の300.8メガピクセル焦平面アレイが0.28平方度の視野を一括撮像する。

WFIの検出器はTeledyne Technologies製のH4RG-10を18枚搭載したHgCdTeアレイで、解像度は0.11秒角とハッブルに匹敵する。8つの科学フィルター、プリズム、グリズムを搭載したエレメントホイールアセンブリにより、撮像とスリットレス分光を切り替えながら広域サーベイを実行する。

もう一つの搭載機器であるコロナグラフ(CGI)は、可視〜近赤外線域で恒星の光を10億分の1レベルまで抑圧する技術を実証する。これは将来の大型宇宙望遠鏡である居住可能世界観測所(Habitable Worlds Observatory)に向けた技術デモンストレーションとしての役割を担う。

ダークエネルギーと系外惑星の包括的調査

ローマン宇宙望遠鏡の科学目的は3本柱で構成される。

第一に、ダークエネルギーの性質解明である。バリオン音響振動、遠方の超新星観測、弱重力レンズ効果という3つの独立した手法で宇宙の加速膨張の原因を検証する。宇宙定数(一定のエネルギー密度)か、それとも一般相対性理論の宇宙論的スケールでの破綻か──この問いに答えるための観測データを蓄積する。

第二に、重力マイクロレンズを用いた系外惑星の統計的センサスである。地球質量の数倍から火星質量に至るまでの惑星を検出し、太陽系型惑星系が銀河内でどれほど一般的かを定量的に評価する。自由浮遊惑星(親星を持たない惑星)の探査も含まれる。

第三に、ゲストインベスティゲーターモードによる一般公募観測である。銀河や宇宙の多様な科学課題に対応する広域サーベイデータを研究コミュニティに提供する。

計画運用期間は5年。この間に10億個以上の銀河の光を測定するとNASAは説明している。

NRO寄贈ミラーから打ち上げまでの長い道のり

ローマン宇宙望遠鏡の原型は、2010年の米国全米研究評議会(NRC)の天文学・天体物理学10年計画で「次の10年で最優先すべき大型ミッション」として推薦された「WFIRST(Wide-Field Infrared Survey Telescope)」にさかのぼる。

2012年、国家偵察局(NRO)がハッブルと同サイズの望遠鏡鏡2基をNASAに寄贈したことで、1.3m設計から2.4m設計への拡張が可能となった。このNRO寄贈の鏡を活用する「WFIRST-AFTA」としてプロジェクトが成熟し、2020年に現在の名称「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」に改称された。名称はNASA初代主席天文学者で「ハッブルの母」と呼ばれたナンシー・グレース・ローマンに由来する。

2016年2月に開発承認を受け、2024年8月にWFIが完成、同年12月に両機器が望遠鏡本体に搭載された。2025年11月25日に宇宙機本体の組み立てが完了し、2026年6月3日にNASAが打ち上げ日を発表した。

商用ロケットへの移行がもたらす意義

ローマン宇宙望遠鏡は、NASAの大型戦略科学ミッション(Large Strategic Science Missions)としては初めて商用ロケットで打ち上げられる。打ち上げにはSpaceXのFalcon Heavyが選定され、打ち上げ地点もアポロ計画や宇宙シャトルが使用した歴史的なLC-39Aである。

NASAの大型宇宙望遠鏡は、ハッブル(1990年、ディスカバリー)、スピッツァー(2003年、アトラスIIAS)、ジェームズ・ウェッブ(2021年、アリアン5)と、これまですべて政府・国際協力のロケットで打ち上げられてきた。ローマンが商用ロケットを選んだことは、NASAの打ち上げインフラのあり方が変化しつつあることを示している。

8月30日の打ち上げが成功すれば、ローマンは約1ヶ月後に太陽・地球L2点のハロ軌道に到着する見通しである。初期運用(commissioning)を経て、本観測の開始は2026年末から2027年初頭と想定されている。

[NASA Roman Mission Blog: Flight Readiness Review Complete](https://science.nasa.gov/blogs/roman/2026/08/21/teams-complete-flight-readiness-review-for-nasas-roman-telescope/)

[NASA Roman Mission Blog: Launch Dress Rehearsal Complete](https://science.nasa.gov/blogs/roman/2026/08/20/launch-dress-rehearsal-complete-ahead-of-nasa-roman-space-telescope-liftoff/)

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