NASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡がFalcon Heavyで打ち上げられ、約150万…

NASAの次世代赤外線望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」が日本時間8月30日夜、ケネディ宇宙センターからFalcon Heavyで打ち上げられた。望遠鏡は約150万km先のL2点へ向かう3ヶ月の巡航期間を経て、ダークエネルギーとダークマター、系外惑星の観測を始める。ハッブルの千倍の速度で宇宙を掃くこの観測装置が、現代宇宙論の最大の謎にどう挑むのかを整理する。

米東部夏時間8月30日午前7時26分(日本時間同日午後8時26分)、NASAのNancy Grace Roman Space TelescopeがスペースX社のFalcon Heavyロケットでフロリダ州ケネディ宇宙センター発射Complex 39Aから打ち上げられた。NASAの発表によれば、ロケットは計画どおりに飛行し、打ち上げ31分後に観測機と分離。地上管制チームは打ち上げ7分後にテレメトリデータの受信を開始し、1時間23分後には太陽電池パネルと下部機器の日除けの展開成功を確認したという。

なぜ「千倍速い」掃天が可能なのか

ローマン望遠鏡の主装置はWide Field Instrumentと呼ばれる3億画素の赤外線カメラだ。塩クラッカー大の4K検出器を18基搭載し、広い視野と高い赤外感度を両立している。NASAは「剛性の高い設計と安定した光学性能により、観測間の切り替え時間をほとんど必要とせず、ハッブル宇宙望遠鏡の千倍の速度で宇宙を調査できる」と説明している。

この高速掃天能力が本来の目的である。宇宙の約68%を占めるとされるダークエネルギーの正体を探るには、広大な天域に分散する何億もの銀河を体系的に観測する必要がある。NASA Scienceの解説ページでは、ローマンがバリオン音響振動(BAO)と呼ばれる初期宇宙の音波の残滓を検出し、宇宙膨張の歴史をほぼ全域にわたって追跡できるとされている。近年の観測では、ダークエネルギーが時間とともに変化している可能性が示唆されており、宇宙論の標準モデルが書き換わるかどうかの検証が期待される。

100万マイルの旅と、3ヶ月の準備期間

望遠鏡は現在、地球から約150万km(100万マイル)離れた第2ラグランジュ点(L2)へ向かう3ヶ月の飛行中だ。通信は打ち上げ約70分後にディープスペースネットワークへ引き継がれ、オーストラリアのキャンベラ局から始まり、スペインのマドリード局、カリフォルニアのゴールドストーン局へと順次切り替わって常時通信を確保する。

今後数日で高利得アンテナとバイザー状の開口カバーが展開され、2回の軌道修正のうち最初の噴射が行われる。また、コロナグラフ機器の電源投入も予定されており、この装置は木星型惑星の直接撮影を通じて、将来のハビタブルワールズ観測所構想につながる技術実証を行う。NASAは最初の画像公開を2027年早々としており、運用中のデータ量は毎日1.4テラバイトに達する見込みで、これはNASA天体物理ミッションとして過去最大となる。機械学習や市民科学者の協力でデータのふるい分けが行われる予定だ。

国際協力と「予定より早い」打ち上げ

NASAによれば、ローマンは「予定より早く、予算内で」完成したとしている。打ち上げ日自体も、スペースXとの調整で前倒しされた。プロジェクトはNASAゴダード宇宙飛行センターが管理し、JPLやCaltech/IPAC、宇宙望遠鏡科学研究所に加えて、ESA・JAXA・フランスCNES・独マックスプランク天文研究所も協力している。

上級プロジェクト科学者のJulie McEnery氏は「ローマンのような目で宇宙を見たことはこれまで一度もなかった」と述べている。 Rubin天文台やEuclid宇宙望遠鏡とのデータ統合により、ダークエネルギーが本当に時間変化しているのかどうか——現代宇宙論が直面する最大の問いへの回答が、この先数年で得られる可能性がある。

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